上京してから

本/映画/文筆  26歳男性 https://twitter.com/krrtats

西加奈子が好きすぎる【おすすめ紹介】

これは作家、西加奈子氏へのラブレターである。

 


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ぼくが初めて読んだ彼女の作品のタイトルは、漁港の肉子ちゃん。

なんとも矛盾したようなタイトルなのだけれど、これは主人公の母親が、漁港にある焼肉屋で働いているからである。

本屋でその本を手に取った理由は、表紙の絵に惹かれたからだ。

 

なんとこの絵、西加奈子氏本人が描いているイラストらしい。

この本以外にも、たくさんの本の表紙を描く西加奈子の多才ぶりには、驚かざるをえない。番組で拝見した事もあるけれど、べしゃりも上手い。面白い。

 

器用貧乏というには、ひとつひとつの要素が高度すぎる。器用金持ちとでも表現しようか。器用で金持ち。最強である。

 

なにより美人なのがすばらしい。

ちょこちょこ髪型を変えているところを拝見するのだけれど、そのどれもが似合っていて、パズルがきっちり嵌まった時にも似たしっくり感を感じとる事ができる。

 

おすすめの作品を紹介

 

なんて見出しをつけてみたけれど、どの作品もおすすめだし、おすすめ出来ない作品がむしろ無い。どの作品も瑞々しく、そして想像力に富んでいて、何よりキャラクターが生き生きとしている。

 

それはすべての小説に共通する事項だし、西加奈子さんの書いたエッセイ「ごはんぐるり」にしても、主人公(つまりは西加奈子本人)のキャラクターというか性格がよく見える作品となっていて、これが彼女の書く作品の特色というか、特徴なのかなとも思う。人のちょっとした面白ポイントや、変な所を見つける、そして表現するのが上手い。それはつまり、すごく人に興味があるという事なのだと思う。

 

すべてが名作であるのは間違いないのだけれど、その中でも個人的にぼくがおすすめする五作をセレクトしてみた。

 

  • 1・サラバ!
  • 2・漁港の肉子ちゃん
  • 3・炎上する君
  • 4・ごはんぐるり
  • 5・あおい
 
サラバ!

 

サラバ! 上

サラバ! 上

 

あらすじ(すべてAmazonより引用)

 

西加奈子作家生活10周年記念作品 

1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。 
父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。 
イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。 
後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに――。 

 

以前このブログでも取り上げた事があるけれど、それでもやっぱり何度でも取り上げたい名作である。

 

 

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

 

 

みんな、それぞれで生きている。それでいい。圧倒的な肯定を綴る、西加奈子の柔らかで強靱な最新長編

 

肉子ちゃんと呼ばれる太った女性と、キクリンと呼ばれる聡明な少女、二人は親子だ。

果たして本当の意味で親子とはなんなのか、それを考える切っ掛けになる。でもシリアスすぎることもなく、笑える名作。

 

 

私たちは足が炎上している男の噂話ばかりしていた。ある日、銭湯にその男が現れて…。何かにとらわれ動けなくなってしまった私たちに訪れる、小さいけれど大きな変化。奔放な想像力がつむぎだす不穏で愛らしい物語

 

短編集ではあるのだけれど、一話一話の濃度は、長編のソレを変わらない。個人的な考えだけれど、短編集にはその作家の個性が出やすいと思っているので、西加奈子氏の作家性を感じたい人は、この本から読むのがいいと思う。

 

 

 

ごはんぐるり (文春文庫)

ごはんぐるり (文春文庫)

 

 

 

直木賞作家・西加奈子はこんなものを食べてきた! 

カイロの卵かけごはんの記憶、「アメちゃん選び?」は大阪の遺伝子、ひとり寿司に挑戦、夢は男子校寮母…美味しオカしい食エッセイ。

 

さっきまで紹介した作品とはうってかわって、エッセイ集である。作家西加奈子というよりは、人間西加奈子としての素顔が垣間見る事ができる。天才的な小説を書く人間は、案外庶民的で、普通の人だった。

 

あおい (小学館文庫)

あおい (小学館文庫)

 

 

27才スナック勤務の「あたし」と、おなかにへたくそな地図を彫っている3才年下のダメ学生・カザマくんは同棲して4か月。ゆったりとしたリズムにどっぷりと浸かった生活をしていた「あたし」は、ある日、妊娠していることに気づく。そして、気がつけば、長野のペンションへの短期バイトを決め、そのバイト先からも逃げ出し、深夜、山のなかで大の字になって寝っころがってしまう。そのとき、「あたし」の視野に、あるものが飛び込んでくる。

 

三編が入ったこの本、西加奈子氏のデビュー作である。著者本人が言うように、多少つたないところがあるのかもしれないが、それでもだからこそみずみずしく、デビュー作でこれが書けるポテンシャルには驚きを禁じ得ない。

 

 

結論・すべての本がおすすめだ

 

ここまで紹介しといてなんだけれど。

すべての本がおすすめだから、とにかく読んでほしい。そう、それだけである。

本を読み、世界を知り、想像して、世界観に浸る。それが小説を楽しむという事だと思うし、物語を楽しむという事だと思う。

 

そしてそれは、人生を楽しむということにも繋がってくるーーなんて思ってしまうのは、ぼくの考えすぎだろうか?

 

とにかく西加奈子氏はすごい。

たぶん小説の天才でもあるのだろうし、そして人生を楽しむ天才でもあるのだろうと思う。