上京してから

本/映画/文筆  26歳男性 https://twitter.com/krrtats

クロン・グレイシーが背負っているもの

つい先日、クロン・グレイシーUFCに初出場。

カサレスという選手相手に一ラウンドで一本勝ち。チョークスリーパーによる決着だった。

 

勝利した後、クロンの顔には笑みがあった。

それはたぶん、勝利したことそのものに対する嬉しさ、喜びもあったのだろうけど、それだけではない気がする。

ぼくの目には、プレッシャーからの解放による安堵感が強いように見えた。簡単に言ってしまえばホッとしているように

 

クロン・グレイシーという男。

背負っているものが多すぎるのだ。

 


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グレイシーという姓の重さ

 

ある種、総合格闘技バーリトゥードの礎にはグレイシーという名は欠かせない存在だ。

グレイシーというブランドは、今より昔、総合格闘技黎明期とでも呼ぶべき時代より有名になった。

ホイスグレイシーヒクソングレイシー

彼らはそれまでの格闘技の概念とはまるで違う文化、伝統を世界へ、そして日本へと輸入した。

 

それはグレイシー柔術、ひいてはブラジリアン柔術である。

ざっくり言うと、寝技。

ポジショニングの概念だ。

いまでは当たり前のマウントポジションも、かつては時代の最先端。

ヒクソンにマウントをとられたら終わりーー。それくらい、柔術は斬新かつ、今までになかった技術だった。

 

ヒクソンの息子であること

 

ヒクソングレイシーという格闘家がいる。


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PRIDE1で高田延彦と戦い、そして倒した伝説の格闘家。かつて初期UFCで活躍したホイス・グレイシーが優勝後に言った

「兄は私の十倍強い」という言葉を皮切りに世界に知られ始める。その後日本で行われたバーリトゥードジャパンなどのトーナメントで優勝。

 

400戦無敗の伝説の男。

それが、ヒクソングレイシーである。

クロンはヒクソンの次男なのだ。

あらゆるグレイシーの中でも最も求心力があり、最強と呼ばれていたヒクソンの息子。

 

 

兄、ホクソンの死

 

クロンはヒクソンにとっての次男である。兄ホクソンはクロン以上の天才柔術家と呼ばれていた。

そんなホクソンは、まだ若い頃に色々なアクシデントが重なり亡くなった。

クロンは柔術の試合で勝ったあと、着ていた道着の内側をはだけてキスをする。

最初は汗を拭いていたのかと思ったけれど、そうじゃないらしい。クロンは内側にホクソンの写真を印刷してして、そこにキスをしているのだ。

 

 

ブラジリアン柔術の代表的選手であるということ

 

 

クロンはブラジリアン柔術を代表する戦士と言ってもいいと思う。

グレイシー柔術という意味でもそうだけれど、クロンほどピュアに、昔ながらの柔術MMAで使う選手をここ最近ではみない。それこそ実の父親であるヒクソンにも似たスタイル。関節蹴りからの胴タックルで、現代MMAの最高峰である、UFCで勝ち星をあげた人間など、他にはいない。

 

クロンが今回勝ったことで、ネット上では数多の柔術家たちが喜びの声をあけだ。

それはつまり、そういうこと。

クロンは世の柔術家を代表したーーというよりも、ぼくら世の柔術を嗜む人間たちが勝手にクロンに乗っかっている。乗っかられたほうはたまったもんじゃないかもしれないが……。

 

 

 

クロンは背負っている。たくさんのものを。

それはたぶん、グレイシーという姓に生まれたものの宿命というか、運命というか。

あるいは呪いにも似た何か、なのだと思う。