天使は奇跡を希う【書評】※若干ネタバレ
可愛らしいアニメ調の表紙に、読みやすい気軽な文体。
気軽さとはつまり、軽薄さであり、読みやすい反面重厚さに欠けるというのが、一般的な考え方なのだろうがしかし。
この作品において、その心配は一切無用だ。
著者の名前は七月隆文先生。
前作は有名なぼくは昨日、明日のきみとデートする、で映画化もされた。書店だけでなく、コンビニなどでも売っているくらい名が知られた作品となった。
実は昔は七月先生は、コテコテのライトノベルを書いていた過去があり、その時の経験から、現在の文章の軽やかさを手に入れたと言われている。
さて、書評。
まず前半と後半で物語の持つ意味ががらりと変わってくる。
前半は良史という名前の少年を主人公とした、星月優花の為に過ごす日常の話であり、後半は星月優花を主人公にした、良史の為の物語である。
前半、つまりは良史パートはちょっと退屈かもしれないが、優花パートに入ってからはページを捲る手が止まらなかった。
最後の締めもキレイ。だが、それをご都合主義と言う人もいるだろう。
でも、この物語の良さはそこにあると思う。
帯にもあった七月先生の言葉。
『ぼく明日』を楽しんでくれた人達が私に期待する新作は、どんなものであろうと。
「ラブストーリー」であり「秘密」があって、「それが明らかになったとき、はっと印象が変わる筋書きのようなもの」ではないだろうか。
だから『天使は奇跡を希う』は、そういうお話です。
まさにその言葉通り、それまでの物語の意味ががらりと変わる、その瞬間を、そしてその物語がどうなるかを楽しむ。
それがこの本の楽しみかたなのだろう。